突然ですが・・・・・請求できるのに請求しないということは、もう知りませんよ!というのが法律の世界です。
これを消滅時効といいます。
「おっ、それなら払わなくてもそのまま放って置けば、楽ちんなんだあ!」と思うかもしれませんね。
ところが・・・
債権の場合は、この時効をストップさせる方法もあるので注意が必要です。
借金問題を抱えており長期間支払っていないというのであれば、時効の援用制度が利用できる可能性があります。
今回は、時効の援用制度が誰にとってプラスとなるのか説明していきたいと思います。
時効の援用という考え方について
まず、借金問題にも時効という考え方が存在します。
一般的にテレビなどで見聞きする時効は、罪を犯しても一定期間が経過すれば罪に問えなくなるというものです。
債権は個人の場合、10年間行使しない場合は消滅します(民法第167条)。
企業から借りたお金、いわゆる消費者金融から借りたものであれば時効は5年です。
貸金業者からのお金は全部これに相当します。商取引に関する企業と個人間のお金はこれに当たると言うわけですね。
消滅時効の援用を主張するには?
しかし、時効というのは時効を受けるものが自身で請求を起こして、初めて成立するものなので、きちっと内容証明でそのことを主張しなければいけません。
時効期間が過ぎた後、借りた人が何もしなければ借金を支払う義務が生じます。貸金業者も支払い督促を行うこともできます。
債務者(借りた人)が時効を援用することによって、借金は初めてこの時に消滅するのです。
簡単に言うと自分が「払いませんよ」と借りた相手に意思表示をしないといけません。
任意に借金の援用せずに支払いに応じていたとしたら、これは援用が出来なくなります
借金があるのを認めているため、払っているということになってしまうのです。
貸したお金を返せと言うことに対して「返します」ということですから、時効の消滅はなくなり、自分で払うしかなくなってしまうのです。
こうなると金額に関係なく1円でも払うと、借金が援用できなくなりますから、気をつけてください。
時効の援用のデメリット
時効の援用制度が認められると、借り入れた金額以外の遅延損害金や金利についても返済義務がなくなります。借金を支払う必要がなくなるのでバンザイです!
上記の内容からすれば、債務者は借金問題が帳消しとなるため、非常にプラスになるように思われます。
しかしながら、時効の援用制度を利用することで、本当にプラスになるのでしょうか。
そもそも時効の援用制度というのは、本来であれば返済すべき借金を返済することなく、相手の金融機関や個人に対して迷惑をかけたことを意味します。
結果的に信用というところに焦点をあてれば、傷がついていると言っても過言ではありません。
信用情報機関という場所があり、ここに個人情報を照会すると時効の援用を利用したことがすべて明記されています。
時効の援用を利用する人に、今後、クレジットカードの作成を認めるような金融機関は存在しないでしょう。
自己破産も同様です。
借金を返済せず法的な手続きを有効に利用し、全額免除した人に借り入れを認めるような金融機関は存在しません。
そのような情報が信用情報機関に記録されるということを忘れてはいけません。
過払い金返還請求が利用できない
時効の援用を利用してしまうと、過払い金返還請求ができないという問題が発生してしまいます。
これはどういうことかというと、借金問題には様々な種類が存在しますよね。
例えば、金利が大きくなってしまい返済できなくなってしまう場合や不当金利によって返済できなくなってしまう状況です。
他にも、違法な金融機関を利用してしまい、絶対に返済できないと思われる借り入れを勧められ、借金問題を抱えてしまったという方もいるでしょう。
この中で特に問題なのは、不当金利によって借金問題を抱えたという事実です。
この場合、過払い金返還請求を利用すれば、払いすぎた利息が戻ってきます。これによって、借金問題がすべて解決する可能性があります。
もしそのような事実があるのであれば、時効の援用などを利用する前に知りたいところです。
時効の援用を利用してしまうと、過払い金返還請求によって、お金が戻ってくる事実があったとしても、この手続きを進めることができなくなるのです。
もし、自分の借金問題について正しく調査し過払い金返還請求を行っていたら信用情報機関にも記録されることはありませんでした。
なぜなら、過払い金返還請求を行う理由は、相手の金融機関の不当金利によるものだからです。
自分の信用が落ちるものではありませんし、積極的に利用していただきたいと思います。
時効を待つ前に借金問題を整理する
もし、時効が近づいている、この援用をできる立場にあるようでしたら、弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。
司法書士や弁護士に頼むことのメリットは、援用のための内容証明が「士業名」になりますので個人名よりも「この人のバックには専門家が付いている」と思わせるために効果があります。
本気度が高いということです。
専門家は期間についてもきちっと見てくれます。債権者からすれば、間の履歴がないとか、まだ時効ではないと、言ってくる可能性もありますが、それは専門家が借り入れの履歴を見ればわかることです。
時効期日の起算日には種々の見解がありますので、時効ぎりぎりではなくある程度の余裕を見て内容証明などを準備する方がベターでしょう。
借金の時効、援用を実行する場合は個人よりも専門家に依頼するのがお勧めです。
ただし消費者金融側から中断措置が取られるとその期間中は時効の日数計算がストップとなり、時には振り出しに戻っていたということもあります。
逃げ回っていれば大丈夫、というものではないので気をつけましょう。
時効の援用にかかる費用の相場
時効の援用にかかる費用は専門家によって異なりますが、大まかな相場は以下の通りです。
- 行政書士:1件につき8,000~25,000円前後
- 司法書士:1件につき30,000円~
- 弁護士:要見積もり
債務整理するにしても、信用情報機関の記録期間も異なりますので、少しでも制限を受ける期間を短くしたいというのであれば、法律事務所を通した債務整理が欠かせません。
もしかしたら過払い金返還請求を利用でき、借金問題が全額解決できる可能性があります。
弁護士に相談するためにも、返済状況から情報を整理していきましょう。
借金の時効援用のまとめ
時効の援用を利用すれば、事実上借金問題がなかったことにすることができます。
しかしながら、信用情報機関には、時効の援用を利用したことがすべて記録されています。
時効によって借金問題を解決するよりも自分で返済した方が、信用情報機関に間違いなく良い記録として残ります。
全く返済しなかった人と自分なりにも返済していった人とでは、金融機関もイメージが全く違いますね。
この情報が記録されると大きな制限を受けることになるため、債務整理をするにしても専門家の法律事務所に相談するのがいいでしょう。